

2010年11月20日(土)、大阪府摂津市で「第6回 NICe全国定例会 in 摂津」が開催された。株式会社カネカ大阪工場と、NICe全国定例会 in 摂津の実行委員長・株式会社日鐘の代表取締役・永山仁氏との全面協力により、工場内が定例会の舞台になるというこれまでにないスペシャルな会となった。部外者がめったに立ち入ることができない製造工程の現場見学&頭脳交換会、NICeチーフプロデューサーの基調講演という3部構成の4時間半。参加者は地元大阪府を中心に、埼玉県、東京都、神奈川県、新潟県、滋賀県、京都府、兵庫県、和歌山県から総勢32名が結集した。



実行委員長・永山氏から、協力への感謝と参加者への歓迎の言葉が述べられ、続いて開催にあたって意気込みが語られた。










宮崎氏は、得意のWebで情報収集に取り組み、製造先と協力してくれる理髪店を探り当てた。顧客は採寸のために理髪店を訪れて、理髪店は採寸データを宮崎氏へ送信し、オーダーメイドのカツラができるわけだが、顧客はその後も、地毛との調整のために定期的に理髪する必要がある。つまり、理髪店にとっては、末永い固定客を確保できるというメリットが得られる。だから協力を求めることができたのだ。
ユーザーメリット、理髪店のメリットを兼ね備え、インターネットに特化した宣伝と既存の理容室・美容室をサービス拠点にしたことで、中間マージンを大幅に削減。これまで高額が当たり前だった男性用カツラを、高品質の低価格商品でしかも通販という新スタイルにより新市場を獲得した。連携する理容室・美容室の数もさらに拡大し、現在では、男性用だけでなく女性用でも市場を広げ、最近のNHK特集番組では、アデランス、アートネーチャー、そしてこのWithの3社が肩を並べて紹介されたのだという。
宮崎氏が創業間もない頃から面識があるという増田氏は、その活躍を嬉しそうに話し、参加者に、後に続け!とばかり、こう語った。

「宮崎さんひとりだったら不可能でも、元々いる全国の理髪店や美容院と組むことで、今までになかった通販型の高品質低価格商品を実現したのです。こういうことをもっと起こしたいというのが、NICeが考えていることです。宮崎さんは、Web制作の依頼がまだ多かった時期から、下請けに甘んじているといずれ苦しくなる時代が来るという強い危機感を持っていました。それでいろいろな異業種の集まりに積極的に参加して、懇親会の雑談の中からヒントを得たのです。危機感を持っていたからこそ、自分でしっかり切り拓くために他者と組むことを考えたのです。この実例の他にも、若い人やひとりで事業をしている個人事業主が、異なる人と組むことによってビジネスチャンスをつかんだ事例はたくさんあります」
ここで改めて、増田氏はNICeの「つながり力」とは何かを強調した。
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「つながり力」とは何か?
また、そのプロセスを経ることによって、その企業や個人が自らの資源を自覚し、「他者とつながるに値する」自己を構築する力。
悪しき個人主義や依存的集団化傾向を越え、日本の底力を引っ張り出すのが「つながり力」。
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増田氏は、センテンスごとにゆっくり読み上げ(正確にはソラで言っていた)、NICeが国の運営から民の運営へと変わっても、「つながり力」の真意に変わるところはない。だが、「循環」の意味がさらに増えてきていると続けた。
例えば、Aの知識をBを介してCへという循環だ。AにとってもBにとっても必要のないAの知識も、Cにとっては有益な知識になるかもしれない。自身が無用でも、惜しみなく他へ伝えることで、そこからまた別の他者に活かせるかもしれない。その循環を惜しまずに提供していこうという意味だ。
「人は思い込みで、どうせ役に立たない、と思ってしまうものです。ですが、この“どうせ”が宝の持ち腐れに成るのです。では、どうすれば、一見関係ないと思う相手に情報を開示できるのか。そのためには仲良くなることなのです。仲良くなる前は、『私は○○です』『あぁそうですか』で会話も終わってしまいます。ところが人間関係ができてくると、たくさん話すことが出てきます。その中から、『だったらこうすれば?』や『こっちの業界はこうだよ』というやりとりが生まれてくるのです」
今日の講演で実例はひとつ、と先に宣言していた増田氏だったが、我慢ができずかここでコインロッカーの電子キーの例を紹介した。
某所のコインロッカーの電子キーは、かつて鍵の専門企業が製造しており、とても高額だったのだという。それをある人物が、電子部品会社に打診した。「おたくならいくらでできる?」「6かな」。「え?6?」「いや、じゃ5」。元の半値以下の数字に驚いたそうだが、よくよく聞くと、桁さえも違っていたのだという。数字に例えるならば、10000円だったものが、電子部品会社では500円でつくれるという回答だったのだ。
『餅は餅屋、鍵は鍵屋』という思い込みから、コインロッカーの所有者は、電子キーは鍵屋に頼まねばと思い込んでいた。そして電子部品会社はまさか自社技術や製造ラインを使って鍵をつくるなどとは考えてもみなかった。このように、世間では当たり前と思っていたこと、業界では当たり前と思っていたことが、他者を介してみると、当たり前ではなくなり、気付かなかった価値までも生み出すのだ。
異なる属性の他者とつながることで、ほかにも大切な発見があると増田氏は続けた。
自分(自社)が何か他社に役立てることがあるという発見だけでなく、自分(自社)の経営資源の核と成るものを、本当に一番すごいところはどこかを、気付かせてくれるのです。最初のあいさつで、永山さんが“強みを教えてもらった”と言っていましたが、他者から言われるまで本人はそれが強みとは思ってもいないのです。他者から見てわかる強みというのは、さらにそれを伸ばす努力ができる、経営に注力すべき判断ができるということです。そのためにも、他者とつながるに値する己であれと。他者によって見つけ出してもらうだけでなく、互いに気付きを与え、発展を与え合うのです。
世の中はどうしても、成長産業、成長戦略という言葉に敏感で、早く新しい市場をつくろうと政府も経済界も謳います。それもひとつではありますが、新技術や新産業を開発するには時間もコストもかかります。今、既にあるもの、改めて見直して見つかるもの、知恵も資源も必要なところへ循環させていけば、もっと経済が元気になるのです。
悪しき個人主義ではなく、強いものに一方的に頼るのではなく、堂々と自分のいいところ、相手のいいところを出し合い、組み合わせて、気持ちよく元気な経済をつくる。それができると思いますし、日本中でそんな活動を引っ張り出していきたいと思います」
増田氏はここまでの話を総括するように、おまけと称して、「つながり力で高め合える、起業家に必要な5つのパワー」を挙げ、それぞれを解説した。
1 実行力
1の実行力は、本人の意思が大前提ではあるものの、「どうしようかな。やっちゃおうかな」とやる気があるところに、他者が背中を押してくれることで実行しやすくなる。2の直感力は、無意識的に収集できる引き出しの多さが増し、判断材料が増すことで直感が高まっていく。3の革新力は、既存の業界の常識にしばられず、思いつき力が高まる。4の発信力は、誰にどのように伝えれば有効かが身に付いていく。5の肯定力は、異なる視点で見てくれる他者の考え方があることで、たとえ失敗しても、次へのステップであるという視点に切り替えられる。この5つはどれもこれも、ひとりで悶々としているだけでは身に付かない、同じ属性だけでは得られないパワーだ。そして、忘れてはいけないのは、つながってみようかな、つながろうと思う実行力が、まずは大前提にあってこそということだ。
「もったいないもの、既にあるもの、得意なものを互いに活かして、得意なことで仕事ができる。そういう幸せな会社経営、幸せな人生を実感できるような世の中をNICeの活動を通して皆さんと一緒につくっていきたいと思います」と、新生NICeの目指す方向性を総括し、講演を締めくくった。

休憩を挟んで、工場見学後の頭脳交換会が始まった。ファシリテーターは、前半が増田氏、後半からは永山氏が担当。どのようなテーマで参加者が話し合うのか、事前に説明は何もなかった。「技術の専門家じゃないし、何も発言できないかも」そんな心配をした参加者も少しは居たかと思うが、まったくの杞憂に終わったはずだ。なぜなら、増田氏が最初に問いかけたのは、「見学して、どこが良かったか、ではなく、逆に、気になったところは?」だったのだ。
参加者それぞれが、自分の感覚で答えられる最初のお題目。それは、見学前に金城氏から指導を受けた「基本ルール」に共通しているではないか! 誰もができることから守るという、階段の手すり持ちの「基本ルール」。誰もが守れることが、しいては現場に、全体に通じる。それと同じく、誰もが言えるテーマは、全員が考え、発言でき、現場に、全体に発展できる。その意を汲んでか、率直な感想が次々と飛び出した。

感想をひととおり聞いた後、次のお題目へと展開した。

まだまだアイデアは尽きないが、約1時間に及んだ頭脳交換会はここでタイムアップ。貴重な機会と労力を惜しみなく提供し、開示してくれたカネカさん・日鐘さんのご厚意に対し、全力で報いようとするかのように惜しまずアイデアを出すNICeな仲間たち。ひとり一人の発言を真剣な表情で聞く田野氏、喜々としてメモを取る金城氏、そのおふたりを嬉しそうにまぶしそうに見ていた前田氏と永山氏。決して批判や否定ではなく、「異なる属性」だからこそ気付く感覚、そこから生まれる自由な発想、繰り出される建設的な意見。それらが飛び交うNICeならではの頭脳交換会はこうして幕を閉じた。
異規模の懐中で開催された今回のNICe定例会。どれだけ異なる規模であっても、異なる属性であっても、臆することなく、誰もが自身の感覚・価値観・経験から、何かしら気付けることがきっとある。そこから、誰かのため、仲間のために、また第2、第3の宮崎氏に続く発展の可能性があるのだということも改めて実感させていただいた。舞台も学びも体感も感動も、まさにスペシャルな「第六回 NICe全国定例会 in 摂津」はその熱気を帯びたまま、名残惜しくもフィナーレを迎えようとしていた。

「つながり力、とてもいい言葉だと思いました。異業種、異職種、異地域、異規模、まさにカネカの事業展開も、つながりの力だと感じました。7つの事業があると最初の概要で述べましたが、7事業が互いに強みを活かしていますし、それぞれの部門で開発した技術がつながっていることも多々あります。もうひとつ、日鐘さんとのお付き合いも、つながり力だといえます。永山さんと前田さんとの出会いは5年前になります、それからずっとお付き合いしています。そんな日鐘さんのビジネスを通してのお考えにも共感しました。フォークリフト教習事業もクレーンも、素晴らしいアイデアだと思います。土日には工場の駐車場が空く。カネカの社員も免許が必要。うまいなぁと。それもNICeの力があったからかなと思います。永山さんは皆さんご存じのように、大変いい人物なので、今回は彼を男にせなあかんなと100%全面協力しようとこの日を迎えました。これからも日鐘さんとのつながりを深めていきたいと思っています」

続いて、起業支援ネットワークNICe理事・高橋慶蔵氏からあいさつ。
「今日はカネカさんのご協力のもと、貴重な体験をさせていただきました。どうもありがとうございました。大阪でのNICeで初めてお会いする方も多いですが、初めてでもすぐに話せるのがNICeのいいところだと思います。リアルとバーチャルがうまく組み合わさって、つながっていくことを今日また再確認しました。NICeは国営から民営となり、今、移行期にありますが、本来あるべき姿に近づいていると思っています。『なくてもいいけれど、あったほうがいい』。増田さんが以前、メルマガにそう書いていましたが、今やなくちゃいけないとの思いが強くなっています。10年経った時、NICeをやっていて良かった、だから今の日本がある。そういう活動にしていきたいと。それは理事など一部の人の力だけで成るものではありません。皆さんの協力とつながりがあってこそですので、これからも楽しく、よろしく、やっていきましょう」

■実行委員長・永山仁氏からメッセージ

「7年前に先代社長から承継しましたが、安全管理体制を刷新するため、ゼロ災にしなくてはという危機感ばかりで、社長としての仕事をしていなかったというのが正直なところです。というよりも、その必要がなかったのです。カネカさんに委ねていれば良かったからです。しかし、リーマンショック後に変わりました。カネカさんは本当にいい会社で、うちを切ることをしませんでした。それはとてもありがたく、嬉しい反面、情けなくもあったのです。何かせなあかんと思い続けていて、誕生したのが、フォークリフト教習事業でした。それまでうちの社員も他の教習所で受けていたのですが、シフト業務の変更で予約を変えようと事務の石崎が電話すると、相手がとても無愛想だと。そんな話をしている時に、うちの前田が「じゃ、うちでやっちゃう?」と。教習事業を始めたのはまさに勢いだったのですが、でもそれは資源なのだと、2009年6月の増田さんの講演を聴いて、後付けで理解できたのです。
他にも展開したいと、今、緊急人材育成支援事業をNICeのメンバーと一緒にやっています。日鐘単独ではできないことも、皆さんとつながることによって、僕らにも資源があるんだと気付かせてもらえる。今日の定例会も、そんなメンバーから教えてもらった気付きから、異規模と掛け合わせたら、と企画したものです。
定例会を実行するのはパワーが要りますが、こんなに大きくなくても、2、3人の集まりでも、ゆるく、気軽にでもいいと思うんです。どんどん盛り上げていきましょう。大阪で、京都で、姫路で、滋賀で、和歌山でと、NICe関西も始まっています。もっともっとお互いを知って、ハッとしたり、ドキドキしたりしながら、みんなで仲間を増やしつつ、この国を盛り上げていきましょう!」
取材・文・撮影/岡部 恵
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